2016年10月18日火曜日

第118回実験実習支援センターセミナー開催のお知らせ


 第118回実験実習支援センターセミナーを、下記の通り開催致します。

                記

 ■ 演 題: 第22回解剖学セミナー
        「腸内細菌叢はどのようにDOHaD (Developmental Origins
        of Health and Disease) に関わっているか?」
      
 ■ 演 者: 内村 康寛
       (Gastroenterology and Mucosal immunology,
        University of Bern, Switzerland)

 ■ 日 時: 平成28年10月28日(金)11:00~

 ■ 場 所: 基礎研究棟2階 教職員ロビー


<講演要旨>
 我々の腸管では、栄養素の体内への効率的な取り込み、そして、有害な細菌やウイルスの遮断を、同時に成し遂げなければならない。このことに関して、少なくとも3つの腸内細菌叢の役割が知られている。第1番目に、宿主に親和性のある腸内細菌叢が、宿主の免疫系を教育し、有害な細菌やウイルスに対して、免疫系が特異的に反応できるようにすること。第2番目に、腸内細菌が、大腸に、地球上で最も高密度と言われる1g当たり1010-1011
の密度で 棲みつくことで、有害な細菌の増殖を防いでいること。そして、第3番目に、腸内細菌叢が、自身の持つ原核生物特有の代謝経路を使って、宿主に有用なビタミンや短鎖脂肪酸などを作り出していることである。
 我々哺乳類は、母親の無菌の子宮内で胎児として育つ。胎児の腸管に最初に棲みつく細菌は、出産時に、母親の産道に生息する細菌であることが知られている。そして、幼児の発育と共に、腸内細菌叢も、安定した細菌叢に発達することが示されている。
 我々の研究室では、無菌マウスと、これに可逆的に定着可能な大腸菌株を使い、妊娠マウスに、一過的に大腸菌株を定着させ、胎児マウスの免疫系の発達を調べる研究を行った。この研究において、一過的に大腸菌株が定着した妊娠マウスから生まれた胎児マウスでは、コントロールに比べ、免疫系がより発達しており、細菌抵抗性に関する遺伝子の発現も高くなっていることが示された (Gomez de Agüero et al. Science 2016)。この研究において、生きた細菌は子宮内の胎児に到達しないが、大腸菌由来の代謝物が、胎児に到達し、胎児の免疫系の発達を助けていることが示唆された。これらの知見は、母体の腸内細菌叢は、胎児が子宮内にいる時点で既に、胎児の免疫系の発達を助けていることを示している。
 私は、上の論文で使われている炭素13を使った大腸菌代謝物の研究を、成人マウスを用いて研究してきました。妊娠マウスへの一過的な大腸菌定着の胎児に対する影響に比べて、成人マウスに対する一過的な大腸菌定着の影響は、遺伝子発現の変化を含めて、小さいようです。これらの知見は、腸内細菌叢が、宿主の発生初期に、より大きな不可逆的な影響を与えていることを示しており、DOHaDにおける腸内細菌叢の重要性を示しています。今回のセミナーでは、哺乳類発生初期におけるに腸内細菌叢の重要性を支持する他の幾つかの研究も紹介したいと考えています。


◆本セミナーは、解剖学講座・実験実習支援センターの共催で開催いたします。


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 本セミナーは、大学院博士課程「医学総合特論」の認定セミナーです。
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※「第118回実験実習支援センターセミナー開催のお知らせ」より転載。